鮮血である。

ホルモンバランスが崩れている。
一週間ほど遅れた生理周期に正直迷惑している。
それはいつもより重度のモノで、婦人科に行こうかと考えている。
生理と乳汁が同時に出ているなんて有り得ない事が私の身体に起こっているのだ。
乳汁は薬の副作用だが薬をやめて一ヶ月経った今も出続けている。
19にして妊娠もせず母乳が出る人間はある意味貴重である。
しかし私にとって乳房と子宮は邪魔でしかない。
男になりたいとかではなく、性別そのものが邪魔だと感じる。


いや、実際男のような服装や仕草や趣味をしている。
しかし月に一度、気付かされるのだ。思い出してしまうのだ。
自分が女であることに。


これは一時的なものであるに違いない。





2004年、私はヒラヒラの生地の薄い服を着て巻き髪だった。
ピンクの上にゴールドのアイシャドウを重ねて、ラメの入ったマスカラをつけた。
すぐ取れてしまうようなリップグロスで、ピンヒールをカツンカツン鳴らせながら歩いていた。


2003年、私は「楽だから」という理由でワンピースばかりを着ていた。
水色のワンピースに白いカーディガン、ヒールの低いサンダル。
真っ直ぐの髪に銀の髪飾りをつけていた。


2002年、私は真っ黒の服に赤と金の髪だった。
眉は途中までしかなくて、イヤリングを沢山耳につけていた。
穴の開いたTシャツに髑髏の金属をジャラジャラつけてボンテージパンツと呼ばれるものを履いていた。


2001年、私は長い黒髪でチャイナ服だった。
膝丈のスカートにシンプルな靴下と黒いストラップシューズ。
チャイナボタンのシャツに中国人の知人から貰った陶器の腕輪をして、中国人かぶれだった。




そして2005年、急に少年らしくなってみた。
短髪にメンズサイズのTシャツ、迷彩パンツにスニーカー。
メッシュキャップを斜めに被って、リストバンドしてほぼスッピンに近い。
なんだか自分でも良く解らないけど。
だから写真を撮るといつも状況が変わっている。
身分証明をするときに学生証を出すのだが、それで写真を実物を見比べ明らかに「本人か?」みたいな顔をする人も沢山いる。
短いときは3ヶ月ぐらいで様子がかわる。
美容院で毎回「イメチェンですか?」と言われる。
久々に会う友人には「誰かと思った!」と言われる。



固定観念を消したいのである。
勿論見た目だけではない。
服や髪型に合った喋り方や行動をする。
それでも根本は変わらない。
「あなたらしいよ」と言われるのが死ぬほど嫌なのだ。
決め付けないでくれ。


でも長年付き合いのある人間はそういう私の行動に慣れて来る。
そしてやっぱり言われる。
「あなたらしいよ」と。


正直2004年あたりから気付いていたのかもしれない。

個性を消したい、普通になりたいと自分で願っていることに。



追いつけない。