足取りは意外と軽い

あるバンドマンに、手紙を書こうと思っている。
多分あの人は壊れてしまったんだ。
確かにあの人の怪我さえなければ、バンドは解散の危機には立たなかったのかもしれない。
悲しいです、解散しないでください、ショックです、続けてください。
ファンの人間はそうやって言うけど、あの人にとってそれは責められてる気分にもなるのだろう。
私も正直辛い。
でも、あの人が日記の中でどんどん自棄になって、無理して笑って、壊れていくのを見ているのも辛い。
心配させまいとあの人は言う。俺は大丈夫、俺は元気、上辺だけの平常心、ハイテンション、空回り、・・・心臓を突かれる思いになる。
強がってないとやっていけないのだろう。
私もそうだ。
泣き言は言わない。
そうやって私は耳が聞こえなくなったんだった。
そうだ思い出した。
だけどあの人はバンドマン。
私とは重みが違う。
苦しいんだろうな。
辛いんだろうな。


「泣きたいときにはなけばいい。」
みんなそうやって生易しい言葉を吐く。
私もいろんな人に言われた。
つまり、そういう目で見られていたって事。
バレバレだったって事。


きっと不器用なんだ。
私もそうだけど、あの人も。
私はあの人のことはそこまで深くしらない。
でも今のあの人は、なんだかとても脆く壊れそう。
いつか気が狂ってしまったらと思うと。


胸が締め付けられる。




って他人の心配ばかりしていくわけにもいかないんだけど。
今は自分の力で文化祭をなんとかして、バイトして、生きて、生きて、生きて。
近道なんてどこにもないんだ。